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台湾の歴史を知る

「台湾人と日本精神」(蔡焜燦著) から日本統治時代を生きた台湾人を知る


 
「台湾人と日本精神」は、日本統治時代を生きた台湾人の目を通して、日本統治時代から現代の台湾を知ることができる大変興味深い本です。

著者の蔡 焜燦さんは、1927年生まれで、1945年の日本の敗戦まで日本統治下の台湾で日本式の教育を受けた日本を話す「日本人」でした。

本書の中で、ご自身のことを親日家を超えた「愛日家」で、誰よりもかつての祖国・日本を愛していると書かれています。

日本の統治下で台湾人は差別を経験しているはずなのに、「なぜここまで日本のことを思ってくれるのだろう」と思いながら本を読み進めました。
 

 

印象に残ったところ

日本統治下の教育

【著者が通っていた公学校(台湾人生徒が通う小学校)での教育内容の例】

  • 当時日本にもなかった校内有線放送学習という授業があり、童謡、詩吟、筑前琵琶、薩摩琵琶、浪花節、ラジオドラマ、神話、日本の歴史などのレコードが流された
  • 内地(日本)から本物の琵琶法師がやってきて生演奏を聞かれせてくれた
  • 音楽の授業ではハーモニカバンドを編成して演奏を楽しんだ
  • 大講堂で十六ミリ映画を見ることができた
  • 四年生以上は、午前10時と午後2時に時事ニュースのヒアリングの時間があった

台湾人生徒しか通わない学校に対しての教育が、私が想像していたよりずっと高度な内容で驚きました。

戦時下の台湾

本書によると、陸軍特別志願兵制度(昭和17年以降)により、台湾人が初めて日本人軍人として戦争に参加できるようになり、この制度が発表されると、約千名の募集に対して四十万人の志願者が殺到したそうです。

多くの台湾人たちが自ら志願して日本のために戦争に参加していたことに、ここでも驚きました。

当時の台湾人も、「日本人」であったのだということを知りました。

【著者の実体験】

  • 自ら少年兵募集に志願し、日本の「岐阜陸軍航空整備学校奈良教育隊」に所属。
  • 「岐阜陸軍航空整備学校奈良教育隊」での体験については、台湾で経験した差別はなかったこと、日本人上官たちとの心温まるエピソードが書かれています。
  • 敗戦の事実を知った時、悔しさと無念の気持ちでいっぱいになり涙を流す。

著者が日本に行く前に家族と撮った写真が載っているのですが、日の丸を手にした軍服を着た少年の著者を中心に家族が写っているその写真は「日本」の風景そのものです。

中華民国支配下の台湾

日本語禁止

北京語が強要され、なんと日本語を話すことが逮捕理由にもなったというそんなめちゃくちゃな時代です。

公用語となった北京語を話せない多くの本省人(台湾人)は職を失いました。

【著者の場合】

  • 体育教師になったため、職場では最低限の北京語でなんとかなった。
  • 北京語は生徒たちが話す言葉を聞いて覚えた。

 

賄賂・汚職・不正社会

警察官が保釈金を目当てにありもしない罪をでっちあげることは日常で、政府の役人や官憲などの要職は外省人(中国国民党とともに中国大陸からやってきた中国人)で占められ、本省人(台湾人)は徹底的に差別・迫害されました。

「金」と「権力」がモノを言うそんな社会でした。

【著者の体験】

  • 嘘の証言から、無実の罪で逮捕されそうになった。
  • 生徒に書いてあげたメッセージが反政府的なもの(実際は違う)であるとして、外省人の同僚教員に密告された。

 

支配側の外省人より支配される側の本省人のほうが民度が高かった

近代文明を知らない外省人と知っている本省人についてのエピソードがいくつか紹介されています。

  • 台湾にはすでに上下水道が整備されていたが、水道を知らない外省人は金物屋で蛇口を買ってきて家の壁にねじ込んで水が出ないといって騒いだ
  • 自動車の運転技術を知らないため、運転手を務めるのは台湾人

 

台湾人と中国人との決定的違い

著者は、「公」という観念の有無と断言しています。

台湾人の祖先も大陸からやってきた漢民族だが、日本統治時代の50年の道徳教育が台湾人と中国人を精神的に分離させたと著者は考えています。

なるほどと思いました。

 

まとめ

『台湾人がもっとも尊ぶ日本統治時代の遺産は、ダムや鉄道など物質的なものではなく、「公」を顧みる道徳教育など精神的遺産なのである。』

これは、私が本書を読んでいてうれしく思った部分です。

私は台湾に旅行で訪れたときに台湾の人々の親切さ度合いにびっくりしたのですが、日本統治時代の日本の教育が、現在の他人を思いやる温かい心を持った台湾人に少しでも影響を与えたのであれば、本当にうれしいことだと思いました。

本書を読んで、日本統治時代を生きた台湾の人たちが日本を第二の故郷と思ってくれる理由が少しずつ理解できるようになりました。

ちょっと話はそれますが、日本統治下時代の台湾で生まれ育った日本人を描いた「湾生回家」という映画があります。

その映画では、日本に戻った彼らが逆に台湾を第二の故郷と思い、今でも台湾のことを想っている様子が描かれていて、当時を生きた日本人の台湾に対する思いを知ることができます。

以前、その映画を紹介した記事を書いているので、参考にリンクを貼っておきます。

興味があったらのぞいてみてください。

映画で台湾を知ろう おすすめ5選(歴史、日本との関係、美しい台湾)

今回は以上です。
 

 

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