台湾を知りたい人におすすめ 『詳説台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』
本書は、本のタイトルにあるように、実際に台湾の高校で使用されている台湾史の教科書(原著『歴史第一冊』三民書房)の日本語訳です。
教科書といっても、絵や写真が多いので読みやすいです。
当時の写真や資料を見るだけでもなかなか興味深いですよ。
台湾の歴史について気軽にひと通り学ぶことができるので、台湾についてもっと知りたいと思っている台湾好きな方にぜひおすすめしたい一冊です。
『詳説台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』の内容
内容は、大きく下記の四篇から成り立っています。
第二篇 清統治下の台湾
第三篇 日本統治下の台湾
第四篇 中華民国統治下の台湾
私たち日本人が知っておきたい「日本統治下の台湾」については、なんと、そのうちの一篇(ページ数だと56ページ)を使って詳しく書かれています。
本書の訳者あとがきによると、この教科書は高校用歴史教科書七点のうち、最高の採択率(高校生の三人に一人が使用)を記録したそうです。
日本の高校生は、日本・台湾間の過去について時間をかけてがっつり学ぶことはないので、一般の日本人は、日本統治下の台湾についてよく知らないというのが実情です。
ということは、日本が過去に台湾に対して行った出来事の数々について多くの台湾の人たちは知っている一方で、日本人で知っている人は少ない、というなんともアンバランスな状況になっているような気がします。
第一篇 早期の台湾
旧石器時代から、17世紀のオランダ・スペインの台湾統治、オランダ人を撤退させてオランダによる台湾の植民統治を終わらせた鄭成功の登場~鄭氏一族の台湾統治までが紹介されています。
台湾の原住民についての紹介もあり、いろいろな民族がいてそれぞれ独自の文化をもっているということを知ることができます。
第二篇 清統治下の台湾
1684年に清から攻撃を受けて台湾の鄭氏政権が終焉し、台湾は清に統治されることになります。
清による台湾統治は、日清戦争の日本の勝利で締結した下関条約により、遼東半島、台湾、澎湖諸島が日本へ割譲された1945年まで続きます。
第三篇 日本統治下の台湾
- 台湾割譲後の武装抗日
- 原住民への圧政
- 台湾人への日本への帰属意識の強化(台湾の言語、文化の抑圧)
- 植民地体制下のインフラ建設、経済発展、文化・芸術の発展
- 台湾人への差別待遇、差別撤廃を求める政治抗争
- 戦時体制下の台湾人の軍事動員
など、日本統治下での出来事が客観的に説明されています。
第四篇 中華民国統治下の台湾
1945年8月15日の日本の無条件降伏により、同年10月25日中華民国による台湾統治が開始します。
二二八事件、白色テロ、厳戒令などの政府による抑圧の時代から現代の台湾へと続きます。
まとめ
台湾史の教科書が初めて登場したのは、それほど昔ではない1997年です。
民主化によって台湾の人たちは初めて自分たちの台湾の歴史を学ぶことができるようになりました。
本書を読むと、台湾が世界史に登場した17世紀のオランダの支配あたりから、1987年の厳戒令解除まで台湾の人たちは何かしらの支配下にあったことがわかります。
お恥ずかしながら、私が初めて台湾を旅行した時は台湾のそんな苦難の歴史について全くと言っていいほど知りませんでした。
私の場合ですが、初めて中正紀念堂(中華民国の元総統蒋介石を記念して建てられた)に行ったときは展示物の前をほぼ素通りでしたが、多少歴史の知識を身につけていった2回目はけっこう時間をかけて興味深く見学した、なんてことがありました。
台湾の歴史を知ることで、台湾を何回も旅している方も、次に台湾に行くときはこれまでとは違う視点で旅行を楽しむことができるかもしれません。
今回は以上です。